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YKK Neighbor 連載最終回

6回にわたって書かせていただいた YKK Neighbor の連載も 今回で最後です。
このような機会を与えていただいた編集部の方に感謝!します。
まだまだ書きたいエピソードは沢山ありますが、それはまた次の機会に。

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先日実家に帰省した時、押入れの奥から懐かしいものが出てきました。
今から30年前、高校生の時にお小遣いを貯めて買った魚の柄の描かれたアフリカ(マリ)の泥染めの布(当時2万円也)。地元のエスニックショップの壁に掛けられていたこの布を初めて見た時は衝撃でした。アフリカの大地で育まれた見たことのない力強さに圧倒された僕は、毎日下校時にガラスごしの眺めてはうっとり。ようやく手に入れた時の喜びは今でも鮮明に覚えています。その後も、インドネシアの藤の籠、中国の豚革のトランクなど、お金を貯めては購入し、嬉々として家に持ち帰りました。
今から考えると少し変わった高校生だったのだと思います。もし今うちのお店に、黙々と商品を眺める男子高校生が、毎日のように通い詰めてきたら相当違和感がありますからね。でもそんなことにも気がつかないほど、いままで触れたことのなかった文化の魅力に夢中になっていたのでしょう。僕の眠っていたハンドクラフト好きのDNAが覚醒したのがこの泥染めの布でした。

今から十数年程前、バンコクのカオサンロードという安宿街を歩いていた時のこと、道ばたに座っているインド人とおぼしき怪しい占い師に声をかけられました。
「あなたは大竹茂夫さん」
えっなぜ知ってる?ゲストハウスとグルなのか?それとも鞄をのぞかれたのか? 心の警戒音が鳴り響き、貴重品の入ったバッグを胸に抱きかかえます。
「大竹茂夫さん、あなたは◯◯才ですね」
ゆっくりと、茫洋とした目で僕を見ながら占い師は続けます。
「あなたの母親の名前は◯◯、弟がひとりいますね、名前は◯◯」 ...
な、なぜ、なぜわかるんだ? いっそうきつくバッグを抱きしめる僕に、さらに誰も知り得るはずのないいくつかの個人情報を告げ 「さらに話しが聞きたければ500バーツ払いなさい、あなたの未来を占ってあげよう」
静かに告げる占い師の申し出を、かなり動揺しながら断りましたが、そのまま未来を占ってもらっていたら、将来、どのような仕事をしていると言われたでしょうか?もしかしたら身ぐるみ剥がされてチャオプラヤ川に浮いていたかもしれませんが。

いずれにしろ、すったもんだしながらも、いろいろな国の人たちと、もの作りをしていけている事はとても幸せなことだと思ってます。 僕の連載は今号でおしまいです。お読み頂きありがとうございました。お近くにお越しの際はお店に遊びにきてください。お会いできる日を楽しみにしています。

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