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テングじゃなくてデング

デング熱にかかった。

出張も残り2日となったカトマンズ、市内の工場で打ち合わせしていた時になんだか急に体に力がはいらなくなった。動けない。どうにもおかしい。工場の人に事情を話しホテルまで送ってもらったのだが、そのままベッドに倒れたまま動けない 食欲もまったくない

笑ってしまうのだが、この時点で僕はこの体調の悪さはマッサージのもみ返しが原因だと思い込んでいた。前日、今まで受けた事がないくらい強烈に痛いマッサージをカトマンズのマッサージ屋で受けたのだ。
もみ返しだ もみ返しに違いない もみ返しはつらいと人から聞いた事がある。
あんな痛いマッサージ我慢するんじゃなかった。 優しかったマッサージ師が今ではうらめしい。

わらにもすがる思いで、日本の鍼灸師の友人に国際電話してどうしたらもみ返しは治るのか聞く。
“患部を冷やした方がいい。患部が熱を持っているはずだから。”
確かに腰から足にかけて熱を持ってる気がする。
早速 洗面所にはいり 裸になり冷たいシャワーを足にかけたら
冷たい。
我慢する ひたすら水を足腰にかける。

30分ほどしてようやくベッドにもどり体調が回復する事を祈る。しかしひどくなる一方だ。
そりゃそうだ デング熱だったんだから、水をかけても治る訳がない。

翌日も体調はまったく好転しないのだが、今日はインド経由で日本に帰国しなくてはいけない。ホテルの人に頼んで医者を呼んでもらいベッドに横になったまま、症状を説明する。

一昨日マッサージをうけた。すごく痛かった。昨日はシャワーで患部を冷やした。
熱をはかる 39度!
えっ!そんなにあるの? えっ!もみ返しじゃないの?

医者はとりあえず日本に到着するまでの黄色いカプセルの解熱剤を処方してくれた。8時間ごとに飲めば日本までもつ。成田に着いたらすぐに医者に行って、検査するように言われる。

日本まで乗り換え時間含めて18時間。
体を引きずりながらどうにかこうにか帰国した。もらった解熱剤も予定通り飲んだ。
飛行機から降りて検疫所をめざして一歩一歩進み、あと少し。もう少し。
僕、熱があります。つらいです。
そう告げるよりも先にモニターを眺めていた検疫官がぎょっとした顔で僕をみる。モニターはサーモグラフィーをだったらしい。さぞや真っ赤な僕が写っていたのであろう。恐るべし日本の科学技術、そして検疫官よ。水際で見事 伝染病患者を食い止めたぞ!
体温なんと40度! 解熱剤の効き目がとうとう切れたらしい。
血液検査をしたが、簡易検査ではなんの病気にもひっかからなかった。
その日はそのまま迎えにきてくれた車に乗って帰宅したのだが、翌日の夕方、病院から電話があり、精密検査の結果デング熱にかかっていると告げられた。
デング熱は蚊が媒介する熱帯の伝染病で予防薬も治療薬もなく、自分の体力で治すしか方法がないとのこと。ひたすら寝た。1週間寝て体重は6kg落ちた。よ うやく熱は下がったのだが体のダメージは相当深刻で あー治ったなあ と実感したのは発病してから3週間たってからであった。

出張の荷物の片付けをすることにした。パスポート入れのポケットから黄色いカプセルが出て来た。
あれ?
解熱剤…..
いやそんなはずはない。最後の一錠は確かにデリーから成田に向かう飛行機の中で深夜起きだして飲んだ記憶がある。

さらにパスポート入れのポケットから もう一つ銀色の薬の包装シートがでてきた。こちらはすっかり空になっている。なんだっけ? ? ?

そういえばデリーでお腹をこわした時に、下痢止めを買ったことを思い出した。

どうやら 途中から、薬を取り違えて解熱剤と信じて下痢止めを飲んでいたようなのだ。どうりで飛行機のなかでずいぶんと苦しかったはずである。

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