夢中になって歩いていると いつの間にやら小さな飛行場の脇にでていた。これからセスナを飛ばすべく人々が準備をしている。なんとはなしにみていると、一人のサングラスの強面のおじさんがこちらにつかつかと歩み寄ってくる。なんであろう。飛行場の敷地に勝手に立ち入ったのがまずかったか。
“お前は飛ばないのか”
唐突におじさんが僕にきりだした。
“…..いや飛ばないですけど”
“なんで飛ばない”
“… ライセンスとかないし…”
おもむろにおじさんは歩き出し格納庫に我々を手招きする。
ガラガラガラ 扉を開けるとそこには数機のセスナがとまっている。そのうちの一機をおじさんは引っ張りだし、
“乗れ!”
と手招きする。
“え!?え え?”
これから飛ぶという事なのか?どう考えてもそうだ。
飛んでみたい….. だけど怖い どうしよう。
着々と準備を整えるおじさん。
断れない。怖いなんていえない。
ええいままよ。セスナに乗り込む。
なにか計器にでも触って異常でもおこしたら大変。なにも触らないように両腕を抱え込む。
あっさりとプロペラがまわりだし、滑走路へ草原の向こうまで走っていくとUターン、プロペラの回転数があがる。
うわうあうわ スピードがあがる うおー 飛んだ! 飛んだ!
飛行機の格納庫がどんどん小さくなっていく。 どひょー 先程あんなに空高くとんでたはずのヒバリよりずっと高く飛んでいる。すごいすごい。 見渡すと360度地平線。こんな景色みたことがない。 すげー ある程度の高度に達したのであろう水平飛行にはいる。
と おもむろにおじさんが操縦桿から手を放し、 お前が持てと身振りで指示をする。
無理、 絶対無理
身振り手振りで断ると、いいから持てという。本当に~!
こわごわ操縦桿をさわり少しだけ右に倒してみる。飛行機が右に傾く。 ウギャ~
もう一度今度は 左に倒してみる。飛行機が左に傾く。ウギャ~
大騒ぎの10数分。本当に楽しかった。
そのあと管制塔のある、事務所でコーヒーをごちそうになる。挽いた豆にそのままお湯を入れたコーヒー。さすが飛行機乗りはワイルドだ。おじさんの飛行機仲間たちとしばらく飛行機談義をして、おいとますることにした。本当に心から飛行機を愛するすてきな男たちの世界だった。空の魅力をかいま見たリトアニアの朝の出来事でした。
又飛びたい。
追記 この後お金を請求されたのかと何人かの方に聞かれましたが、そのような事はありませんでした。また同行のRは僕が人気の無いところに連れて行かれ襲われるのではないかと思っていたみたいですが、そのような事はありませんでした。