何かが臭う.
カマクラ店のスタッフが口を揃えて言う。干物のような臭いがすると。
カマクラ店のスタッフが口を揃えて言う。干物のような臭いがすると。
確かに臭う。たえず臭っている訳ではないのだけれど、たまになんとも言えない臭いの固まりが僕の鼻に不意打ちをくらわす。しかしその臭いのもとがわからない。屋根裏、ストックルーム、商品棚 それから2、3日暇があれば鼻をひくひく ひくひく嗅ぎ回った。その結論がどうやら床下。
水曜日の定休日を利用して床をはがす事にした。
無理をいって大工のいんちゃりに昼過ぎに来てもらう。一番臭いがきついと思われる、レジ前の床板をはがす事にしたのだけれど長い長い5寸釘で固定しているからはがすのも大変。いんちゃりの出番だ。やっとすべての釘を抜き終わり さあ とばかりに板を上げ中を覗き込むのだけれど何も無い。そんなはずは無いとくまなく探すが、石ころ一つなく、なぜか先程した臭いすらまったくしないのはどういうことか?そんなバカな、あの臭いは錯覚だったのか、このままでは忙しい中来てくれたいんちゃりに申し訳がたたない。
しかし今日は気温が低いせいかあのぐっと来るくさった干物臭がちっともしない。必死になり臭いを求めて床を嗅ぎまくる。床の穴と言う穴を這いつくばり嗅ぎまくる。
…..不意にきた! ストックルーム脇の柱の付け根の穴からあの懐かしい臭いが濃密に立ちのぼる。ここくさい 確かに臭う。なぜかうれしく、臭いを胸いっぱい吸い込む。いんちゃりここだ。臭ってみなよ。
間違いない、笑顔の2人。
よしこの板をはがそう。張り切るいんちゃり。
よっしゃ
はがした床板の下から現れたのは 息絶え 横たわる大きなドブネズミ君…
生前お会いする事はなかったのだが、何かの縁であろうチャハットの床下で一生を終えられたドブネズミ君。となりのソンベカフェの宇治さんも参加してくれてしめやかに葬儀をとり行い冥福を祈った。
みんなフードを被りネズミ風の正装。