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100円に泣く

日曜日のこと、鎌倉のお店のオープンにむけて昼飯後家をでた。
運良く道にでたところでバスがやってきた。整理券をとり、乗り込む僕。

すでにスタッフは集まり作業ははじまっている。急がなくては。
到着したらすぐに降りられるように運賃を用意しておこう。カバンを開き財布を探す。
ない。

もう一度探す。

ない。 そんなはずはない。

ズボンのポケット、カバンの内ポケット あらゆる可能性に想像を巡らしあちこちまさぐっている時、携帯電話がなった。お父さんお財布忘れているよと息子から。
肌寒い雨模様にもかかわらず嫌な汗がじわじわしみ出す。カバンの底から110円みつかったが、運賃の170円には60円足りない。
南無三。
終点についた。乗客が全員降りるのを待って、運転手に財布を忘れたと言うと無表情にじっと見つめられる。
沈黙。つたう汗。
その時、よかったらこれ使ってください。目の前に銀貨が差し出された。最後にバスを降りた男性だ。
いえ、そんな。
いいんです。使って下さい。
僕の手のひらに100円をおいて男性はさっと立ち去った。ありがとうございます。 大きな声でお礼をいい100円玉を両替機にいれて運賃箱にコインをいれる。
あっ間違って10円多く180円いれてしまったんですけど。
あー 無理だね あきらめて。とこちらも見ずに冷笑する運転手。
なにおー10円返せ。
と一瞬いきりたったのだが、よくよく考えればもとはあの男性の100円。返せというのもおかしな話。
あ、そうですよねー と薄ら笑いを浮かべ、バスを降りたのだった。
GT HAWKINSのリュックを背負った男性よ、ありがとう。あなたのことは当分忘れません。京急バスよ、やはり入れ過ぎてしまった運賃は返した方がいいと思うよ。
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