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アスリートの本棚

久しぶりに電車に乗って東京に行く事になり、車中の手持ち無沙汰に備えてkioskで何か雑誌を買う事にした。 

特集「 アスリートの本棚」 Numberの最新号。

電車に乗り込み早速パラパラと雑誌をめくる。

日本を代表するアスリート達はいったいどのような本を読んでいるのか。ぎりぎりの勝負の世界で生きる選手達の心の支えは果たしてどのような本なのか、そし てその哲学の源とは。 スポーツ雑誌らしからぬ文系なアプローチに興味をそそられる。ちなみに表紙は、サッカー日本代表主将 長谷部誠だ。

これはいつもの僕の癖なのだけれども、雑誌を巻頭の特集記事からではなく、後ろの方の小さな囲み生地やら、連載記事などから読み始めてしまう。ぱらぱらと 雑誌を繰り、 「どちらとも言えません」 という題名の 作家 奥田英朗氏の エッセイから読む事にした。奥田氏は 「インザプール」 や 「サウスバン ド」 などスマッシュヒットを世に送り出す気鋭の作家だ。

ふむふむ なになに

そもそも文学というのは、現実世界でヒーローになれない、うらなり少年達が耽溺する空想の世界であって、将来スポーツ選手になるような少年達は、現実世界 でヒーローであり学校の主役なのであるから、空想の世界に逃げ込む必要が無い。よって本に接することもないまま成人を迎える。

しかし、スポーツ選手も歳を重ね中堅どころになってくると、様々な社会的な付き合いも増え、チーム内での責任やリーダーシップを求められ、無学はいかん、教養も身につけなくてはいかんと一念発起、本でも読もうという事になる。

そんなスポーツ選手がまず手に取るのは、「 人を動かす30の法則」 とか 「 成功する七つの習慣」 などという自己啓発本なのだという。そしてだんだん本に慣れてくると、「 三国志」 や 「 龍馬がいく」などの歴史小説を読む様になり、そこから得た人生訓をもとに 若手に
「遠慮はするな ただし配慮はしてやれ」
とか
「男は逃げなかった回数だけ強くなる」
等々、人生訓を語りだすようになりだし、リーダへの道一直線!

目標を定めてそれを達成する事に慣れているスポーツ選手というのは 本から何かしらの教訓を学び取ろうとする傾向があるけど、本来の読書というものはそこ から何かを得ようとしたり役に立てたりしようという目的意識をもってするものではなく、ただ単純に面白いから 読む! 好きだから読む!というスタンスが なにより大切でそこに喜びがあるのではないだろうか

という要旨で なるほど フムフム だったのだが、このエッセイから雑誌を読み始めたのが間違いであった。

特集のアスリート達の推薦する本を列記する
カーネギー「人を動かす」、北方謙三「水滸伝」、松下幸之助「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」、ナポレンヒル「成功哲学」、司馬遼太郎「坂の上の雲」……

もちろん、そんな傾向の本ばかりではないのだけれど、僕の目は吸い寄せられる様に格好良く写真におさまりそれらの本を推薦するアスリートに引き寄せられてしまうのであった。

このエッセイを書いた奥田氏と載せたナンバー編集部の勇気に 脱帽して感心して心配。

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