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権力と千枚通し

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ペットボトル、ライター、ハサミ、乾電池。
空港によって多少の基準の違いはあれど、今では飛行機内に持ち込めないものが随分増えた。手荷物検査で見つかった場合は容赦なく没収されてしまう。

ライターで火をつけてタバコを吸い、金属製のフォーク、ナイフで機内食を食べていた20年程前の、長閑な飛行機旅行に郷愁を感じないでもないが、こちらとてテロに巻き込まれるのはまっぴらごめんなので、国によっては何度も執拗に行われる手荷物検査ををうんざりとしながらも文句も言わず受けている。現に数年程前、某国で、僕が乗る前日の同じ便の乗客の荷物から爆弾が見つかるという事件があった。翌日、搭乗を待つ間、空港で見かける人誰もがテロリストに見えてしまい、自分のあまりの胆の小ささに苦笑してしまったことがある。

数年程前のネパール出張の時のこと、同行するスタッフの手荷物が成田空港の保安検査に引っかかった。手荷物を開けるとハサミやカッターが鞄の底から出てくる。当然のことながら刃物類はその場ですべて没収になった。唖然としたものの、知らなかったのであれば仕方が無い。納得がいかない様子のスタッフに、手荷物のルールを説明し、現地でまた同じものを買えばいいと諭し機上の人となった。

二週間後、ネパールトリブバン空港。
この空港の、たちの悪い警官には気をつけないといけない。荷物検査と称し、何かと難癖をつけお金や物品を巻き上げようとするので有名なのだ。まあ概して日本人は甘く見られているのだろう。この僕も日本製の4色ボールペンを「give me~」と生温かく耳元で囁かれたり、ネパールルピーは一定額以上は国外に持ち出せないから没収する、と因縁をつけられたこともある。いずれも無視したが。
与し易しと思えば小さな権力を盾につけ込んでくる木っ端役人とまでいったら言い過ぎだろうか。

「手荷物検査場に警官に金銭や物品を要求されたら、すぐに日本大使館に電話を!」

という張り紙が、しばらく前にネパールの空港の保安検査場のあちこちに日本語で貼り出されていたから、よっぽど被害が多かったんだろうと思う。その張り紙の下で働く警官もさぞ間抜けな思いだったろう。

そんなこともあり、ネパールから帰国する際には難癖つけられないように、手荷物には特に細心の注意を払っている。
その日もチェックイン、出国審査、そして手荷物検査を無事パスして、搭乗口に向かっていたのだが、気がつくと後についてきているはずのスタッフがいない。振り向くと大柄な警察官に捕まり部屋の隅に連れて行かれて荷物を開けられている。因縁をつけられているのか?英語の不自由なスタッフがもごもごと説明しているようだが、ふんぞり返った警官は聞く耳をもたないようだ。

あったまに来た。
つかつかと早足で廊下を戻り二人のもとに歩みよる。
絶対に許さない。権力を笠に着やがって。
「どうしたんだ!何が問題なんだ?俺が話しを聞く。」
警官の目を見据えて詰め寄る。
「いやあさっきから説明してるんだけど、分ってもらえないんだ。機内に刃物は持ち込めないんだよ。」
見ると警官の手には千枚通しが握られている。

「鞄に入れたらダメだって言うから筆箱に入れたんじゃないですか。筆箱にいれて鞄にいれるんじゃだめなんですか」
警官に丁重にお詫びをして、千枚通しを破棄してもらったのは言うまでもない。

(写真は本文とまったく関係がありません。なんとなくイメージです)

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