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YKK Neighbor 連載5回目

毎度おなじみ YKKの広報誌 Neighborの連載5回目です。
久しぶりにネパールに行った喜びと、薄雲のような自分に対する不安について書きました。

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ヒマラヤの麓の国ネパールに久しぶりに行ってきました。
以前は年に数回は足しげく通っていましたが、王制崩壊、政情不安など様々な要因が重なったことで、一時期は全くもの作りができなくなり、そのかわりに行く様になったインドにすっかりとはまっているうちに、いつの間にか2年以上も足が遠のいていました。

カトマンズの小さな空港に着くと、懐かしい友人達が迎えにきてくれていました。早速彼らの仕事場に行き、あらかじめ頼んでいた鞄のサンプルチェック。あーでもないこーでもないと男達が集まってそれぞれの意見を思い思いに話し、デザインを検討しながら、新しいサンプルをその場で作ります。夜になるといつものレストランに行き、モモやスクーティー(干し肉)をつまみビール(銘柄はエベレスト)を飲んでとりとめもなく話し、さらに寺院の立ち並ぶ街の広場で夜風にあたりながら無駄話。そうだ、僕はネパールの人々のなんとも言えないこの優しい間合いが大好きだったんだ。石段に座り若者たちのストリートサッカーを見物しながら、闇の中に溶け込んで行く様な懐かしい安堵感を覚えたのでした。

頻繁に訪れていたころは、目が慣れすぎて全く目に入らなくなってしまっていたネパールのハンディクラフトも、久しぶりにみると魅力的なものが見つけられるのも不思議です。素焼きの壷やお皿を山のように積み上げて売っているマーケット、ロクタといわれる植物の繊維を漉いて作った紙のお店。もっと時間をかけてじっくりといろいろ見て、話しをしてみたい。離れてみてあらためてネパールのよさを実感した次第です。多分来年にはネパールで作ったあたらしいもの達が発表できると思うので楽しみにしていてください。

今回の出張で、ある意味一番驚いたのは出発前のこと。いつものようにチェックリストをもとに、荷物の準備をしたのだけれど、なんだかいやに荷物が少ない。パスポート、お財布、洗面用具、着替え...何度も確認したけどすべて揃っている。腑に落ちぬまま床に着いたのですが、翌朝、玄関でした最後の最後のチェックで、ようやく原因がわかりました。シャツやジャケットなど上半分の着替えは入っているのですが、ズボンやパンツなど下半分の着替えが全く入っていなかったのです。どうりで荷物が少ないはずです。
ネパールで新しいものを作る喜びと自分への不安を抱えながら、今月はここで筆を置こうと思います。

ダンネバー  フェリベトゥンラ(ありがとう。また会いましょう。)

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