先日イタリアに行った時、イタリア人の旧友に会うのをとても楽しみにしていた。
以前にネパールで会ったその友人は、とてもセンスがよく博識で哲学的な顔をしていて、とてもかっこよいおじさんだった。イタリア旅行の後半は彼にさまざまな面白気なところに連れて行ってもらうという話しになっていて、この旅のメインのつもりでいたのだが、待ち合わせの空港に少し遅れて現れた彼は、なんか少し疲れているみたいだった。彼のうちまでバスでいったのだが、久しぶりに会ったというのに苦し気に目を閉じて押し黙ったままだった。なんか変。どうしたんだろう?
その日は釈然とせず疲れていたこともあり寝てしまったのだが、早朝、尿意を催しトイレに行こうとした僕が見たのは、痩せた体にブリーフ一枚で銀紙をライターであぶり、妖し気なる煙りを恍惚と吸引する重度のヘロイン中毒患者と成り果てた彼の姿だった。
吸引後しばらくして、トイレに駆け込み嘔吐する声を聞くのは毎朝の日課となった。
彼と過ごした数日間はいちいちあげつらわないが、あんまり楽しいものではなかった。そのなかで救いだったのは彼の古い友人達の存在だった。
しょっちゅう彼のアパートメントを訪れては食料や飲み物を差し入れてくれて、いつものようにトイレに閉じこもってる彼を 「また吐いているぜあいつ」 みたいなのりで受け入れていることだった。度量がひろいな、大きいな 月はのぼるし、日はしずむな。
とてもいい人たちだった。
別れる日僕達がかわした最後のほうの会話は、金貸してくんないか という話しだった。
断わりそのまま別れた。ほっとした。
テレビみたいなウルルンする別れは望むベくもなく。
ボナセラ。